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コラム

第1回 内丸 薫 東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科 准教授

内丸薫ポートレイト2

「さあ、キャリねっと」
 日本のHTLV-1ウイルス感染は、九州、沖縄地方に圧倒的に多いという偏った分布をしていることも一因となり、以前は国としての対策は取られておらず、地方自治体任せになっており、結果としてこれらの地域以外では政策としては特別なものは取られていませんでした。しかし、その後の厚生労働省の研究班の調査などにより、首都圏や阪神地区など、大都市圏に住む方の割合が増加してきていることが分かってきました。安倍政権でも大都市圏への人口集中は問題になっていますが、この様な大都市圏への人口の移住により、キャリアの分布が変化してきているのです。このことはこれまでの様にHTLV-1ウイルス対策を地方単位で行うのではなく全国的な視点で行う必要があることを意味しており、平成23年度から国の政策としてHTLV-1総合対策が開始されました。妊婦さんのHTLV-1ウイルス抗体検査を公費で全員に行うのを一つの軸に、相談体制の整備などいろいろなことが掲げられています。ご存知のように、抗体陽性と判明した場合は授乳方法について指導を受ける訳ですが、それ以上の疑問、不安にこたえる体制が十分か、などまだまだ問題があります。一方で、厚生労働省はHTLV-1キャリアの方を対象とした相談を全国の保健所で行うことを想定して通達していますが、厚生労働省の研究班の調査では全国の60%以上の保健所ではキャリアの方に対応したことがなく、4分の3の保健所では相談件数はほとんどゼロと回答しており、相談に対するニーズがないのではないかという声も聞かれます。
 これまでの調査研究は直接的にキャリアの皆さんの意向を調査するものではなく、キャリアの皆さんの現状がどうなっていて、どのような対策を取ればよいのか、大規模データがありませんでした。だから「キャリねっと」なのです。「キャリねっと」にご登録いただいた皆さんから寄せられた登録情報は、HTLV-1キャリアの皆さんが何を必要としているのかを明らかにしてくれるものになり、今後の対策を検討していく上で大変重要なデータになります。また、HTLV-1キャリア外来でキャリアの方の相談にのっている時、「ほかのお母さんたちはどうしたのかしら」「みんなは病院とかに通ってるのかな」などの声を聞くこともあります。だから「キャリねっと」なのです。みなさんの声を集めて発信して行く場として、またいろいろな情報を得る場として、「キャリねっと」に登録して頂ければ幸いです。

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