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コラム

第9回 佐竹 正博 日本赤十字社中央血液研究所 所長

佐竹正博

HTLV-1と輸血について
 このコラムをお読みの皆様の中には、献血の際にキャリアであることがわかった方もいらっしゃると思います。今日は輸血とHTLV-1のかかわりについてお話ししましょう。
1980年代の初めにこのウイルスが発見されるとすぐに、輸血によるこのウイルスの伝播が問題となりました。HTLV-1に感染した人は必ずそれに対する抗体を作りますが、HTLV-1に対する抗体を検出する検査法が間もなく開発されました。そして日本の血液センターでは、1986年からすべての献血血液についてこの抗体が検査されるようになりました。これはウイルスそのものを検出する方法ではありませんが、感染したことを確実に示すもので、世界で最も早い導入となりました。抗体検査導入以降、日本では輸血による感染例は報告されていません。また、HTLV-1は血中では白血球に結合した状態で存在しており、白血球とともに体内に入って初めて感染するとされています。日本の血液センターから医療機関に供給される血液は、2007年よりすべて白血球除去という処理が施されています。これは、採血した血液を特殊なフィルターを通して、白血球を99.9%以上除去するものです。これによって、血中に存在するHTLV-1は白血球と共にほとんど除去されます。このように抗体の検査と白血球除去により、日本では輸血によるHTLV-1の感染はほとんど起こらないと言えます。
 HTLV-1の抗体検査が行われる前の輸血においては、輸血によってHTLV-1が感染することがありました。しかし輸血によってHTLV-1に感染した方からATLが発症した例は、世界で一例も知られていません。その理由はよくわかっていません。ただ、ごく少数例ですが輸血による感染者の中でHAMが発症した例が報告されています。
 輸血医療は、感染症の伝播に関して常に敏感でなければなりません。ただ、あらゆるウイルスが輸血で伝播されるわけではありません。インフルエンザウイルスやノロウイルスが輸血で問題になったニュースは皆さんも聞いたことはないと思いますが、実際そのような例は一例も報告がありません。

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